メリルヴィルの街で


4月9日午後2時頃、インディアナ州メリルヴィルにある
Radisson Hotel at Star Plazaに到着した。
ホテルとライヴが行われるスター・プラザとは
渡り廊下でつながっているので、
帰りのタクシーを心配する必要がない。

菊田さんには、B.B.キングとココ・テイラーへのプレゼントを託した。
きっと菊田さんだったら、楽屋でBBと会えるにちがいない。
私はステージの下から菊田さんやBB、ココ・テイラー、
そしてボビー・ブランドの姿を見れればそれで満足だった。

ロビーに入ると子供達のはしゃぎ声が聞こえたので、
下を見下ろすと大きなプールがあり、みんな楽しそうに泳いでいる。
南国のムードがそこだけ漂い、まるでリゾート地に建つホテルみたいだ。
のんびりとした空気が流れていて、シカゴのホテルとは一味違う。
部屋に着いてコーヒーを飲み、一息ついてからホテルの外に出てみた。

朝から何も食べていなかったので、となりにある「デニーズ」に入る。
すぐにブロンドのウェイトレスさんが「Hi!」と笑顔で話し掛けてきた。
日本では、「いらっしゃいませ、デニーズへようこそ」が決まり文句になっているが、
アメリカのお店などでは「ハ〜イ!」が一般的な挨拶。
日本人はそれに慣れていなくて何も反応しないでモジモジしていることが多いが、
こちらからも「ハ〜イ!」というのが礼儀らしい。

メニューを見ると、日本と違ってレパートリーが少ない。
サンドウィッチと、ハンバーガーの写真が目に付いた。
注文したクラブ・サンドウィッチは、だいたい日本の1.5倍の量があり、
付け合せのポテト・フライは山のように積まれている。
飲み物の量も半端ではない。
ジュースだというのに、中ジョッキが使われている感じ。
ウェイトレスさんは丸いお盆で食事を運んでくれるが
お客さんが帰った後片付ける時は、業務用の大きな箱みたいなトレイを持ってきて
ボンボンそこに入れていく。
全てがいかにもアメリカらしく苦笑してしまった。

満腹感を感じながら外に出ると、
道路脇に立つスター・プラザの大きな電光掲示板に
「B.B.KING!」の文字が浮かび上がった。
「いよいよ今晩会える!」と思うと胸がドキドキしてくる。

ライヴ開始の8時まであと4時間半。
近くに大きなショッピング・モールがあると聞いたので
タクシーを呼んで出かけた。
そこは「ウェストフィールド」と呼ばれるショッピング・タウンで
店舗が150ほど入っていて、気が遠くなるような広さだ。
とりあえずCDショップに入ってみた。
日本にはないコーナーがたくさんあり、羨ましい限り。
エルヴィスもB.B.キングも、
そしてブルース関連のCDもたくさん置いてある。
記念に、BBキングのデビュー・シングルや
サン・スタジオで吹き込んだ音源も入っている
4枚組ボックス・セットなどを買い、
その後ブラブラ歩きながらウィンドウ・ショッピングを楽しんだ。

アッという間に時間は経ち、時計を見たら6時過ぎ。
急いで公衆電話のブースに行き、タクシー会社に電話をかけた。
この電話が日本と違ってまたおもしろい。
日本では、お金をいれてからダイヤルを回す。
ところがこちらでは、まず受話器を取ってダイヤルを回す。
その後「いくらお金を入れてください」と声が聞こえてくる。
入れるお金が足りないと「いくら足りません」とちゃんと催促される。

やっと会社につながり「ここに来てください」と場所を告げると、
「45分かかります」と言われてしまった。
仕方なく「お願いします」と言って待つこと1時間。
この間、どんなにヤキモキしたことか・・・
モールからホテルまでは車で5分ほどの距離なのに、
何とそこまでの歩道がないのである。
ハイウェイを歩くわけにはいかないので
タクシーが来るのをひたすら待った。

ホテルの部屋に着いたのは7時半頃。
慌てて着替える。

この日のために新調したスーツ。
BBの彼女、「ルシール」は黒のドレスに身を包んでいる。
だから私も黒のスーツを買った。
BBがこのスーツを見てくれるはずがない。
それでもBBが好きな色の服を買い、
それを着て彼のステージを見たかった。

15分程で支度を済ませ、渡り廊下を使わずいったん外へ出てから
スター・プラザの中央エントランスへと向かう。
続々と車が駐車場に入ってきて、昼間のひっそりとした光景が嘘のよう。
入り口を入って右手に長いテーブルがあり、BBグッズがたくさん売られていた。
そこで今回のツアーのポスターとTシャツ、パンフレットを買った。
たくさんの人で会場はあふれ、幕の下りていないステージに
人々の関心は集まる。
時計を見たら8時過ぎ。ほぼ定刻通りにライヴは始まった。

<04・5・5>



4枚組BOXセット

ツアーのポスター